ウナギのことを何も知;らずに食べる罪

最近の鰻の高騰、日本の、世界の養鰻そのものが危機的状況になっているとも聞いています。そんなとき「日経ビジネスオンラインに東大農学生命科学科の海部健三先生の文章がありました。

のんきに「高いけど、折角だからここは奮発して・・・・」などと言っていられない悲惨な状況に陥っている。

土用の丑の日にこんな内容で、友人のDrからメールが来ていました。

ここの所かなり忙しかったので、先ほど目を通してなるほど納得!!

皆さんにもご紹介したいと思います。


 8月3日は二の丑。夏の土用の丑と言えばウナギだが、近年は稚魚(シラスウナギ)の不漁とそれに伴う値上がりが盛んに報じられるようになっている。ウナギをおいしく食べ続けるためには何が必要なのか。河川や沿岸におけるニホンウナギの生態などを研究しており、『わたしのウナギ研究』の著者でもある東京大学農学生命科学研究科の海部健三・特任助教に話を聞いた。

(聞き手は小平 和良)

近年、シラスウナギの不漁が大きな話題になっています。今年2月には、ニホンウナギが環境省のレッドリスト (絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)に入り、資源枯渇も懸念されています。一方、幼生(レプトセファルス)の餌が分かり、完全養殖に成功するな ど、ウナギの生態の研究は進んでいます。

海部:確かにウナギの海での産卵 生態については、日本の研究は世界のトップを走っています。しかし、陸の周辺に来てからの生活については、身近なはずなのに、まだ意外と知られていませ ん。例えば、何を食べているのかについても、最近までまともな報告がありませんでした。どのようなスピードで成長しているのか、どのような住みかを好むの かといったことも同様です。こうしたことは、漁師さんが何となく知ってはいましたが、研究としては行われていませんでした。このあたりは欧州や米国の方が 進んでいて、日本とは正反対です。

 ウナギが減っている現状を変えるために人間ができることは、海に対してよりも身近な川に対しての方が大きい。そのためには、陸の近くに来てからの生活をもっと知らなければなりません。その研究を進めています。

 研究でいくつか分かったこともあります。例えば、ウナギには海だけで過ごすものと川に入ってくるものがいるというイメージがありましたが、海だけ で過ごしていると考えられていたウナギも、一度は川に入っているのです。海水と淡水が混じり合う汽水の部分までは来て、そこから川を上るものと海へもう一 度下っていくものがいます。

 このことは、ウナギが非常に川に依存している魚であるということを意味しています。これまで「川はダメージを受けているけれども、海で生活してい るウナギもいるのだから問題ないじゃないか」といった考え方もありましたが、そうではありません。川に依存しているのですから、人間の活動の影響を大きく 受けていると言えると思います。

川の環境変化がウナギ減少の一因になっているのですね。

海部:要因の1つだと思います。

 川の環境は「量」と「質」の2つに分けて考えなければなりません。そして、おそらく量の問題の方が大きい。量とは住める水域の面積が減少している ということです。例えば、川の周りにあった湿地が埋め立てられて農地になっているとか、その一部は田んぼになっていて生息域になり得たかもしれないけれど も、今の田んぼは生物がアクセスしにくくなっているとか、そういったことがあります。排水しやすいように排水溝を掘ってしまったため、生物が行き来しにく くなってしまったのです。

 また、ダムや河口堰によって、水はあっても魚が入れなくなっているということもあります。つまり、量の問題は水そのものが減少している場合と、アクセスできる場所が減っている場合があるのです。

 もう1つが質です。護岸がコンクリートになったり、水質が悪くなったり、あるいは外来生物が入ってきたりして、環境の質が変わっているということ です。「川の環境」といった場合、どちらかというと質の変化に目が行きがちです。でも実は量の変化の方が影響は大きいはずです。ただ、日本でどれくらいの 水域が接続不可能になっているかといった研究はまだまだ進んでおらず、さらに進めなければなりません。

 これはウナギに限った話ではありません。日本で食べられている川の魚の多くは、海と川を行き来しているのです。川の魚で最も漁獲量が多いアユも海 と川を行き来しています。しかし、障害物ができることによって、多くの生物がその生活史を完結できません。そういう場所が増えています。

ウナギの減少は河川の生態系全体への警鐘

 今、欧米でもウナギの減少の主要な原因はハビタットロス(生息域の減少)ではないかと考えられています。もちろん、獲りすぎの問題もあって、漁獲 量も消費量も減らさなければならないのは確かです。シラスウナギ漁では各地で漁期を短くするなどの保護策を取っていますが、漁獲量のうち一定の割合を自然 に戻すなど、もっと効果的な減らし方を考えるべきでしょう。しかし、そこにばかり目が行ってしまうと、難しいとはいえ、比較的短期間で解決可能な問題に見 えてしまいます。

 獲る量を減らすのも簡単ではありませんが、対応はできます。しかし、それで解決するほど簡単な話ではないのです。仮にウナギ減少の最も主要な要因がハビタットロスにあるとなると、かなり難しくなります。

対応が難しいし、時間も相当かかると。

海部:そうです。ただ、そこに対応すればウナギだけではなくほかの生物も増えていくでしょう。河川環境の観点から考えると、ウナギの減少はウナギだけの問題ではなく、その河川の生態系全体への警鐘として捉えた方が良いと思います。

ウナギは河川環境の変化の象徴と言えそうですね。

海部:そう思います。資源としてもそうですが、野生生物として見ても、ウナギが減少しているということは、その裏側にもっと根深い問題があるのではないかと思います。

河川環境を自然な状態に戻すことが必要ということでしょうか。

海部:自然に戻すのは難しいで しょう。自然度が高いところはそのまま残す。既に変わってしまっているところは今の経済活動とのバランスを取るということになると思います。それでも何と かカギとなる部分を人間が手伝うことで、今まで進入できなかった水域に進入できるようにするといった形に変えることが必要だと思います。

東日本大震災以降はむしろ防災の観点から河川などの工事を進めることが増えています。

海部:しかも急がなければなりま せんから、環境アセスメントが十分でない場合もありそうです。バランスという意味では難しいと思います。でも、結局はバランスを取らなければならない。そ の際、バランスを誰が決めるのかが問題です。それはやはり、そこに住む人が最終的に決めなければならないのでしょう。

 ただ、工事によって生物にどのような影響があるか分からなければ決めることもできません。その情報を提供するのが研究者の役割だと思っています。

 ウナギについても同様です。スーパーで安く売られている中国産のウナギの中には欧州で絶滅するのではないかと言われている種類のものが、なぜかニホンウナギより安く売られています。こうしたこともきちんと伝えていかなければなりません。

それでもウナギを食べるかは消費者が決めること

ヨーロッパウナギは絶滅危惧種なのに売られているんですね。

海部:ヨーロッパウナギは絶滅危 惧種の中でも最高ランクに位置づけられています。ワシントン条約でも規制されていますが、輸出国の許可があれば取引できる附属書IIでの掲載です。EUは その後、ワシントン条約とは別に取引禁止にしていますが、EUに加盟していない国であれば、ワシントン条約を満たせば取引することができるのです。

 でも食べている人の多くはそのようなことを知りません。

消費者としてはそういうものを買わない方がいいのでしょうか。

海部:それは消費者が決めることだと思います。研究者の中でもそうするべきだと言う人もいます。例えば、安いウナギを食べるのはやめて、ちゃんとしたウナギ屋さんで食べるという提案もあります。それによって消費量を減らそうというものです。

 でも、私はそれはみんなが決めればいいことだと思います。牛丼チェーンのウナギも老舗のウナギ屋さんのウナギも元は同じですから。どちらを守って も同じなのです。消費者の多くは、どちらも生命としては同じ価値を持つことを知らないのだと思います。それを知ってもらうことが大事だと思います。

ウナギの現状を知って買うのと知らないで買うのとでは意味が違いますね。

海部:そう思います。極論を言えば、すべて知って納得づくであれば、絶滅してもいいから全部食べてしまえという考えだってあると思います。

やはりウナギに限らず、魚は牛や豚や鶏などとはまったく違いますね。

海部:そうです。魚は陸上の家畜ほど人間が関与できず、天然資源を使っているのです。そのことがあまり理解されていないと思います。加えて科学万能の意識から抜け出せていない。人間の科学の力で何とかなると思われていますが、何とかならないと思います。


現時点での放流には問題も多い

保護のためにウナギを放流をしている漁協などもありますが、これについてはどうお考えでしょうか。

海部:放流については、良くないとまでは言いませんが現時点では推奨できるものではないと思います。いくつかの問題があります。まず放流の効果が分かっていません。これについては今、放流ウナギの効果を測定しようとしており、今後確かめられるようになるかもしれません。

 また放流されるウナギは一度養殖に入ったものです。つまり人間の手が入ってしまっています。さらに、養殖されたウナギの中で成長が悪いものが選択 的に放流されています。選択的に成長の悪い遺伝子が残されることになるわけです。これが全国で行われることは由々しき問題です。

 輸入されている異種ウナギが混入し、放流されてしまう危険性もあります。以前は国内でヨーロッパウナギが養殖されていて、これが放流に回されていたこともあります。ある川では産卵のために下ってきたウナギの95%近くがヨーロッパウナギだったということもありました。

 放流されるウナギに異種ウナギが混入することの、最大の問題点は、病原体や寄生虫が入り込む可能性があることです。以前、ニホンウナギがヨーロッ パに持ち込まれた際、ニホンウナギの寄生虫のためにヨーロッパウナギが大きな影響を受けたことがあるのです。こうしたことが日本でも起こるかもしれませ ん。

 そのことを考えても、異種ウナギを入れるのであればトレーサビリティーをしっかりしないといけません。当然、相手国の資源のことを考える必要もあります。

適正な価格でウナギを売ればいいという問題ではないのですね。

海部:そういう問題ではありません。獲る量と河川の環境の問題を解決していかなければなりません。

 獲る量については、減らさなければいけないのは間違いないのですが、まず基礎となるデータがないという問題もあります。漁獲高もはっきり分かって ないですし、ウナギがどれくらいいるのかも分かっていません。つまり、どれくらい減らせばいいのかも分かりません。欧米と比べると、圧倒的にモニタリング が弱い。欧米は古くから細かくやっていますし、漁業とは別に科学的なモニタリングをしています。ただ過去を嘆いても仕方がありませんから、これからしっか りとモニタリングをしなければなりません。東アジア鰻資源協議会では、既にやっていこうという話になっていて、一部ではスタートしています。

 本当は国などがやってくれればいいのですが、それも簡単ではないでしょう。大学も単なるモニタリングにはお金も時間も使いづらい。むしろ地元の方々が環境学習の一環などでモニタリングをやってくれるような形ができないかと考えています。


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海部 健三(かいふ・けんぞう)氏
東京大学農学生命科学研究科特任助教
1973 年、東京都生まれ。98年に一橋大学社会学部を卒業後、社会人生活を経て2011年に東京大学農学生命科学研究科の博士課程を修了。同年より現職。 2012年に東アジア鰻資源協議会(EASEC)の事務局を担当。専門は保全生態学および水中生物音響学。河川や沿岸におけるニホンウナギの生態のほか、 頭足類(イカやタコの仲間)の聴覚を研究している。(写真:竹井 俊晴)

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